
蛇と蛙(へびとかえる)
冬になると蛇も蛙も何もたべなくなって土の中へもぐってしまいます。 秋の末になって一匹の蛇が蛙に近づいて、 「どうだい。今までは敵同士だっ...
冬になると蛇も蛙も何もたべなくなって土の中へもぐってしまいます。 秋の末になって一匹の蛇が蛙に近づいて、 「どうだい。今までは敵同士だっ...
私は嬉しい。「あやかしの鼓(つづみ)」の由来を書いていい時機が来たから…… 「あやかし」という名前はこの鼓の胴が世の常の桜や躑躅(つつじ)...
武雄さんはお母さんが亡(な)くなられてから大層わるくなりました。今日も何か面白いいたずらは無いかと考えてお座敷に来ましたら、机の上にお祖母...
お天気が続いて、どこの田圃(たんぼ)も水が乾上(ひあ)がりました。 太郎のお父さんも百姓でしたが、自分の田の稲が枯れそうになりましたので...
巨大な四角いビルディングである。 窓という窓が残らずピッタリと閉め切ってあって、室(へや)という室が全然、暗黒を封じている。 その黒い...
豚吉(ぶたきち)は背(せい)の高さが当り前の半分位しかないのに、その肥り方はまた普通(あたりまえ)の人の二倍の上もあるので、村の人がみんな...
一 「百万円あったら、ああしよう……こうしよう」 と空想していた青年中村芳夫は、思いもかけぬ伯母(おば)の遺産を受け継いで...
一 チエ子は奇妙な児(こ)であった。 孤児院に居るうちは、ただむやみと可愛いらしい、あどけない一方の児であったが、五ツの年の春に、麹町...
大きな手がかり 村長さんの処の米倉から、白米を四俵(ひょう)盗んで行ったものがある。 あくる朝早く駐在の巡査(おまわり)さんが来て調べ...
前篇 「草川の旦那さん。大変です。起きて下さい。モシモシ。起きて下さい。私は深良一知(ふからいっち)です」 暑い暑い七月の末の或...