遠野物語(とおのものがたり)

一 此庭に歌のじょうずはありと聞く、歌へながらも心はづかし
一 おんげんべりこおらいべり、山と花ござの御庭へさらゝすかれ
○雲繝縁、高麗縁なり。
一 まぎゑの台に玉のさかすきよりすゑて、是の御庭へ直し置く
一 十七はちやうすひやけ御手おてにもぢをすやくまわしや御庭かゝやく
一 この御酒ごしゅ一つ引受ひきうけたもるなら、命長くじめうさかよる
一 さかなにはたいもすゞきもござれども、おどにきこいしからのかるうめ
一 しようぢ申や限なし、一礼申て立や友たつ、みやこ
一 仲だぢ入れよや仲入れろ、仲たづなけれや庭はすんげない※(二の字点、1-2-22)
一 すかの子は生れておりれや山めぐる、我等もまわる庭めぐる※(二の字点、1-2-22)
○すかの子は鹿の子なり。遠野の獅子踊の面は鹿のようなり。
一 これの御庭におい柱の立つときは、ちのみがき若くなるもの※(二の字点、1-2-22)
○ちのみがきは鹿の角磨つのみがきなるべし。
一 松島の松をそだてゝ見どすれば、松にからするちたのえせもの※(二の字点、1-2-22)
○ちたはつた
一 松島の松にからまるちたの葉も、えんがなけれやぶろりふぐれる※(二の字点、1-2-22)
一 京で九貫のから絵のびよぼ、三よへにさらりたてまはす
○びよぼは屏風びょうぶなり。三よへは三四重か、この歌最もおもしろし。
一 仲たぢ入れろや仲入れろ、仲立なけれや庭すんげなえ※(二の字点、1-2-22)
○めず※(二の字点、1-2-22)ぐりは鹿の妻択つまえらびなるべし。
一 鹿の子は生れおりれや山廻る、我らもめぐる庭を廻るな※(二の字点、1-2-22)
一 女鹿めじかたづねていかんとして白山はくさんの御山かすみかゝる※(二の字点、1-2-22)
○して、字はしめてとあり。不明
一 うるすやな風はかすみを吹き払て、今こそ女鹿あけてたちねる※(二の字点、1-2-22)
○うるすやなはうれしやななり。
一 何と女鹿はかくれてもひと村すゝきあけてたつねる※(二の字点、1-2-22)
一 ささのこのはの女鹿子めじしは、何とかくてもおひき出さる
一 女鹿大鹿ふりを見ろ、鹿の心みやこなるもの※(二の字点、1-2-22)
一 奥のみ山の大鹿はことすはじめておどりできそろそろ※(二の字点、1-2-22)
一 女鹿とらてあうがれて心ぢくすくをろ鹿かな※(二の字点、1-2-22)
一 松島の松をそだてゝ見とすれば松にからまるちたのえせもの※(二の字点、1-2-22)
一 松島の松にからまるちたの葉も、えんがなけれやぞろりふぐれる※(二の字点、1-2-22)
一 沖のとちゅうの浜す鳥、ゆらりこがれるそろりたつ物※(二の字点、1-2-22)
一 なげくさを如何いかな御人おひと御出おいであつた、出た御人は心ありがたい
一 この如何いかな大工は御しあた、四つかどて宝遊ばし※(二の字点、1-2-22)
一 この御酒を如何な御酒だとおぼす、おどに聞いしが※(二の字点、1-2-22)菊の酒※(二の字点、1-2-22)
一 此銭このぜにを如何な銭たと思し召す、伊勢お八まち銭熊野参くまのまいりつかひあまりか※(二の字点、1-2-22)
一 此紙を如何な紙と思し召す、はりまだんぜかかしま紙か、おりめにそたひ遊はし
播磨檀紙はりまだんしにや。
一 あふぎのお所いぢくなり、あふぎの御所三内の宮、内てすめるはかなめなり※(二の字点、1-2-22)、おりめにそたかさなる
○いぢくなりはいずこなるなり。三内の字不明。かりにかくよめり。
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遠野郷本書関係略図