歌う白骨(うたうはっこつ)

「私もいまこの人のいったことに嘘はないと思います。問題は二人がどうして反目したかということですが、しかし、そこまで詮索する必要はないでしょう。」
「でも、ゼフリズ君、一応君を警察へつれて行かなくちゃならん。それは君にも分ると思うんだ。」
「分ります、」と、ゼフリズはいった。

「あれは妙な事件でしたね、ガードラー砂州の事件は。しかし六カ月とは、ゼフリズにとって、少々軽すぎるようです。」
 事件後、半年ほどたって、私たちをたずねてきたグランパス船長はそういった。
「妙な事件でした。私はあの事件の蔭には、なにかあると思うんです。たとえば、前に会ったことがあるとか――」ソーンダイクはいった。
「私もそんな気がするんです。しかし、私はあなたがあんなに早く秘密を見破ったのには驚いてしまった。あれから私はパイプというものに興味をもつようになりましたよ。とにかく妙な事件だった。パイプに殺人の真相を話させたあなたの腕前はたいしたもんだ。」
「そうですな、」と、そばから私がいった。「あのパイプはドイツの昔話『うたう白骨』のなかの魔法のパイプみたいに、秘密をもらしたわけです。もっとも、昔話にでてくるのは、パイプはパイプでも、煙草をすうパイプでなくて、楽器のパイプなんです。知っていますか? ある百姓が、殺された人間の骨をひろってきて、それで笛をつくったのです。そしたら、その笛をふくとこんな歌をうたうのです――

「私は兄弟に殺され、骨を埋められた、砂のなか、石のしたに。」

「おもしろい昔話だ。」ソーンダイクはいった。「それに教訓もふくまれている。耳をすましてきくと、私たちの周囲にある生命のないものが、みななにかの歌をうたっているんですよ。」