ちょびひげサミュエルのはなし(ちょびひげサミュエルのはなし)

表紙
口絵1
口絵2
口絵3
扉

挿絵1
しいたげられ(ながらも) 手におえない
この生きものでも ひときわ かしこげな
赤い目が めだつ かわいい ちっちゃな
お友だちで たくみな ぬすっとでもある
〈サミー〉を しのんで
挿絵2

挿絵3
 むかしむかし あるところに ぐいぐいタビサさん という はらはらしっぱなしの おかあさんネコが おりました。 いつも 子ネコたちが いなくなってしまって、 そのたび かならず いたずらを おこされてしまうのです!
 パン作りの 日には、 みんな おし入れに とじこめてしまうのが お決まりでした。
 モペットと ミトンズは つかまりましたが、 タムが まだ 見つかりません。

挿絵4
 おかあさんの タビサは 家じゅうを 上に下にと みゃあみゃあ タムに よびかけながら 回りました。 かいだん下の なん戸を のぞいたり、 ちょうど 空き部屋に なっていた ほこりまみれの ねどこも さがしてみたり。 まっすぐ 上がって 屋根うらも 見たけれど、 どこにも 見当たりません。
 古い むかしからの おうちで、 おし入れや かくし通路が いっぱい あるのです。 あつみ1メートルくらいの かべも あって、 なかでは いつも ごとごと へんな 物音、 まるで ちいさな かくし かいだんでも あるみたい。 かべ板の すきまに ぎざぎざ おかしな 入り口が あって、 夜な夜な ものが そこへ 消えていくのです ―― とくに チーズとか ベーコンとか。
 おかあさんの タビサは だんだん そわそわしてきて とにかく みゃあみゃあ 声を 上げました。

挿絵5
 こうして 母ネコが 家じゅう さがし回っているうちに、 モペットと ミトンズが いたずらに 乗り出します。
 おし入れの 戸には カギが ないので おしあけて 出て行きました。

挿絵6
 ふたりが まっすぐ 向かうのは かまど前の うつわで、 ふくらみ待ちの パンだねのところ。
 ふたりは ちいさな 肉球で ぽんぽん ――「あたしたちで かわいい マフィンでも 作ろっか。」と ミトンズが モペットを さそいます。

挿絵7
 ところが ちょうど そのとき 戸口を たたく 音が して、 びくっとした モペットは 小麦粉の たるへ 飛び込んでしまいました。

挿絵8
 ミトンズも 牛乳おきばに かけこんで、 ミルク入れが ならんでいる 石だなにあった 空のつぼの なかに かくれます。

挿絵9
 お客さんは おとなりさんで しんせきの リービさんで、 イーストを かりに 立ちよったのでした。
 そのいとこの タビサは そわそわ みゃあみゃあと かいだんを 下りてきて ――「お入りください。 あら リービじゃない! おかけなさいな。 ちょっと今 よわったことに なっててね、 リービ。」と なみだを こぼす タビサ。「むすこの ねこぬこタムが 見当たらないの。 ネズミに つかまったのかもしれなくて。」と エプロンで 目もとを ぬぐいます。

挿絵10
「あいかわらずの わるガキなのね。 前 お茶に 来たとき あの子 お気に入りの よそいきの ぼうしを ネコの ゆりかごに したのよ。 とりあえず どこを さがしたの?」
「うちじゅうよ! イエネズミが やたらめったら わたしには むり。 もう、 聞き分けない 子どもたちなんだから。」と ぼやく ぐいぐいタビサさん。
「わたしなら ネズミも 平気、 あの子を さがしてあげる、 ひっぱたいて やるんだから! まあ このかまどの かこい こんなに ススだらけ。」

挿絵11
「えんとつ そうじ しなくちゃね ―― ああ、 ねえリービ ―― モペットと ミトンズも いなくなってるわ!」
「ふたりとも、 おし入れから 出たのね!」

挿絵12
 いとこ同士の リービと タビサは ふたたび おうちを しらみつぶしに さがしはじめて。 リービの かさで ベッドの下を つついたり、 おし入れを くまなく さぐったり。 はてには ロウソクを 手に、 屋根うらにまで 入って いしょう箱の なかまで のぞいたり。 何にも 見つからないのに 戸の ばたんという 物音 それから だれかの かいだんを かけ下りる 音が ひとたび 聞こえてくるのです。
「ほら、 イエネズミだらけ。」と おろおろする タビサ。「台所の 穴から 7ひき ちっちゃいのを つかまえて、 この間の 土曜に ごちそうに したの。 あと 1度 見たのよ、 おじさんネズミを ―― ぶくぶくした おじさんネズミなの、 リービ。 わたし、 飛びかかろうとしたら 向こうは 黄ばんだ 歯を こっちに ひんむいて 穴に さっと にげこむんだから。」

挿絵13
「ネズミって ほんとうに かんに さわるわ、 ねえリービ。」と タビサ。
 リービと タビサは さがしに さがしました。 ふたりには、 屋根うらの ゆか下から 何かが ごろごろする 音が 聞こえるのですが、 やっぱり 何にも 見当たりません。