ちょびひげサミュエルのはなし(ちょびひげサミュエルのはなし)


挿絵14
 台所に もどる ふたり。「ほおら、 ここに まずは ひとり。」と リービは 小麦粉の たるから モペットを 引きずり出します。
 ふたりして 子ネコから 小麦粉を はたき落とすと、 台所の ゆかへと 下ろしました。 子ネコは どうも おびえている ようす。
「ねえ! おかあさん。」と モペット。「台所に おばさんネズミが いてね、 パンだねを すこし ぬすんでった!」

挿絵15
 大人ふたりは あわてて パンだねの うつわを 見に行きました。 たしかに ちいさく ひっかいた あとが はっきり、 ひとかたまり パンだねを 持っていかれたのです!
「どっちへ 行ったの、 モペット?」
 でも モペットは こわくて こわくて たるから 1ども 顔を 上げられていなくて。

挿絵16
 もう 見うしなっては いけないので リービと タビサは その子を 連れたまま まいごさがしを つづけることにしました。
 みんなで 牛乳おきばへと 向かいます。

挿絵17
 さっそく 見つかったのが ミトンズで、 空のつぼに かくれていました。
 つぼを かたむけると その子が 転がり出てきます。
「ねえ、 おかあさん!」と 言い出す ミトンズ ――「ねえ、 おかあさん、 牛乳おきばに おじさんネズミが 来たよ ―― こわいくらいに でっかい ネズミでね、 おかあさん、 それで バターを ちょびっと のしぼうを かっぱらってった。」

挿絵18
 リービと タビサは たがいに 目を 合わせます。
「のしぼうと バター! ああ かわいそうな タム!」と さけびながら 手を こまねく タビサ。
「のしぼう?」と リービ。「屋根うらで ごろごろ まきまきしてる 音 聞こえなかった? あの箱 さがしてる ときよ!」
 リービと タビサは もう1ど かいだんを かけ上がります。 なるほど たしかに 屋根うらの ゆか下から ごろごろ まきまきしている 物音が はっきりと。

挿絵19
「たいへんよ、 タビサ。」と リービ。「のこぎりが いるから、 すぐに たてぐやジョンを よんでこないと。」

挿絵20
 さて ここからは ねこぬこタムに おきた できごと。 いいですか、 古い おうちの えんとつに 上るのは たいへん ばかげたことなのです、 すぐに まいごに なるし でっかい ネズミが いるのですから。
 ねこぬこタムは おし入れに とじこめられるのなんて ごめんでした。 母ネコが パンやきの したくに 入るのを 見て、 すがたを くらまそうと 心に 決めて。

挿絵21
 つごうの いいところをと 見回していると、 かまどの えんとつが 目に 入ります。
 火は ついたばかりで まだ あつくはないのですが、 まきから むせる 白い けむりが 出ていました。 ねこぬこタムは かこいに のぼって 上を のぞいてみます。 大きな 旧式の かまどでした。

挿絵22
 えんとつ そのものは ひとひとり 立って すすめるくらいの 広さが あります。 だから 子ネコの タムちゃんなら ゆうゆう だいじょうぶ。
 まっすぐ かまどへと 飛び上がって、 やかんかけの 鉄のぼうの ところに 手足を かけて。
 ねこぬこタムは そのぼうから また 大きく ぴょん、 えんとつ内の 高いところに ある でっぱりへ ちゃくち、 かこいに ススを ちょっくら はたきおとします。

挿絵23
 けむりに けほけほ せきこむ ねこぬこタム。 なんと 下の かまどの まきが ぱちぱち、 もえだしたのが 聞こえてきます。 かくごを 決めて まっすぐ てっぺんまで 上って おおいの 外へ 出て スズメを つかまえようと 考えました。
「ひきかえすのは むり。 すべったら かまどに おっこちて、 ぼくの きれいな しっぽと この青い うわぎが こげちゃうよ。」

挿絵24
 えんとつは とても 大きくて、 むかしながらの ものでした。 だんろに 太い まきを くべていた 時代に 作られた しろものです。
 えんとつの くだは 屋根の上に 石のタワー よろしく つきでていて、 日ざしが 上から下へと きらきら てりかえし、 雨を ふせぐ 山がたの おおいのなかに さしこんでいて。

挿絵25
 おっかな びっくりの ねこぬこタム! のぼって、 どんどん どんどん 上へ。

挿絵26
 さらに ススまみれに なりながら なんとか 横道を すすみます。 まるで 自分が ちいさな ほうきにでも なったみたい。
 まっくらで 何がなんだか わかりません。 くだから くだへと 次々と つながっているらしく。
 けむりは 少なくなりましたが 自分が どこに いるのか わからなくなる ねこぬこタム。

挿絵27
 上へ 上へと よじのぼったものの、 えんとつの てっぺんに たどりつくでもなく 岩かべの いきどまり。 ところが 何ものかに 少し ずらされていて、 その前には ひつじの 肉のほねが ちらばっていて ――